河原正明×三澤万里子
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実は学生時代からの友人同士 ▲
河原:こうしてクラブが進むべき方向性がはっきりしたら、そのために何をやるべきなのかが見えるようになって、その中で僕が出来ることは何だろうと考えるようになったんです。それで、ファンの窓口となる「ファンサービス課」を立ち上げることになりました。
三澤:ファンの窓口というと、まさに病院の窓口となる医療事務のような役割ですね。
河原:クラブとサポーターとをつなぐ役目ですから、医療事務のお仕事に近いかもしれません。立ち上げた当初は、とにかくクラブへの不満ばかりいただいて正直大変でした。でも、どんなに厳しい意見でも、誠意を持ってきちんと向き合うことだけは徹底しました。
フロントとしてサポーターと議論する場を設けて、ヒザを突き合わせて徹底的に話すことにしたんです。サポーターからの言葉はしっかりと受け止めつつ、我々も応援してもらえるような強いクラブになるために努力していきたいということを、何度も何度も話し合って、ようやくサポーターに理解してもらえたんです。
それからですね、サポーターとの距離感や、フロントと選手の距離感がグッと縮まり、スタジアムに一体感が生まれたのは。
三澤:立場も役割も違う人たちが同じ方向をむけるって、組織にとってすごく大切ですよね。
河原:結局、サッカーのクラブチームって誰のためにあるかって考えてみると、サポーターやスポンサーや自治体、そして選手や監督やフロントなど、多くの人のためにあるんですよね。その中で、僕らフロントはクラブを運営する役割を担っているに過ぎないんです。
三澤:サポーターを愛しているから選手も頑張れるわけで、選手やクラブを応援したいからサポーターも真剣になる。全員がクラブを愛しているからこそ、一体感が生まれ、組織として大きな力が発揮できるんですね。
個々の役割をしっかり自覚して
それぞれが持ち場で強みを発揮する
そういう組織作りが組織を強くしていった
河原 正明
株式会社日立柏レイソル
広報・宣伝部部長
東京都出身。日本大学経済学部卒業。卒業後、百貨店勤務を経て、2001年1月より現職。チケットやグッズ、スポンサーなど主に営業職を経験し、2008年から広報部門を担当。
昨年、クラブ初のJリーグ優勝を果たした。今年は国内だけでなく、アジアにも進出するチームを陰で支えている。
河原:ただ、どんなに一体になれても上手くいかない時もあるんです。選手は歳もとるし、どうしてもクラブとして新陳代謝を図らなければいけないと。その中で、選手や監督を替えたりするんですが、2009年の夏に再び不調に陥り、クラブとして決断し、監督を解任することにしたんです。
それで現監督のネルシーニョを迎えたのですが、彼が来てからチームとしてすべての歯車が噛み合ったような、そんな印象がありました。その時は、残念ながら2部に降格してしまいましたが。
三澤:やっぱり指揮官の影響は大きいと?
河原:大きいですね。監督がレイソルに来ることになって、最初に要求したのが「フロントは大丈夫か?」ということでした。
ネルシーニョ監督はブラジルでも名門クラブを歴任してきた名将ですし、Jリーグでの優勝経験もあります。選手の戦力やクラブの資金力より、チームを強くするためには、フロントがしっかり機能していることがいかに重要かをよく知っていたんですね。
三澤:クラブが組織として正常に機能しているのかってことですね。
河原:僕らはフロントとして、選手がどれだけいい環境でプレーできるかってことに尽力しているわけで、選手は最高のパフォーマンスを発揮することに尽力している。監督は勝つために全精力を注ぎ込んでいるわけです。どれが欠けても強いチームにならないんです。ですから、役割をきっちり分ける意識はすごく強く持っています。
三澤:個々の役割をしっかり自覚して、徹底して専門性を追求すると、おのずと組織力がアップすると。
河原:フロントの僕がドリブルやシュートが上手くても何の意味もないですからね(笑)。サッカークラブは、与えられた仕事に対しての責任が非常に明確な組織なんです。そういう組織作りが組織を強くしていったと思うんです。それぞれが持ち場で強みを発揮できるという意味で。